今回は遺産相続に関する「遺言」について記載しました。
「遺言」という言葉は皆さんもお聞きになったことがあると思いますが、
実際に遺言書をご覧になった方は多くはないのではないでしょうか。
大っぴらに権利主張を行うことが好ましく受け取られない日本文化のためでしょうか。
遺言を書く立場にある方も、遺言を書いてもらう立場にある方も、
なかなか遺言を書いたり、遺言を書いてもらうようにお願いしたりするまでに至らない場合が多いように思います。
例えば、
兄弟姉妹の中でただ一人、親の面倒を見ているにもかかわらず、
親に対し自分が他の兄弟姉妹よりも多くの持分を取得できるよう
遺言を書くようお願いすることを躊躇われる方が多いのではないでしょうか。
しかし、
遺言がない場合に、親の面倒を見たことを理由として面倒を見た方の相続分が自動的に多くなるかというと、そうではありません。
子には親に対する扶養義務があり、親の面倒を見ることはこの扶養義務の履行に過ぎず、原則として相続分の増加をもたらすものではないとされています。
従って、
親の面倒を見ている方は親にお願いして自己の相続分を多くした遺言を書いてもらう必要があります。
そんなことをお願いするのは気が引けるという方もいらっしゃるかもしれませんが、
親の面倒を見ている以上は当然の権利であり、何ら恥ずかしいことではありません。
自分の権利は自分で守る必要があります。
では、遺言にどのような種類があるかですが、細かいものは別として、大きくは三種類の遺言があります。
①自筆証書遺言、②公正証書遺言、そして③秘密証書遺言です。
①自筆証書遺言とは、
故人が自筆で書いた遺言書を言います。
修正や加筆がしやすく費用がかからないメリットがある反面、紛失や改ざんがあったり、故に法的な効力を争われたりするケースが多くあります。
また、家庭裁判所での検認も必要になります。
次に、②公正証書遺言とは、
公証役場で公証人に口頭で遺言内容を伝え、
内容を記載してもらった遺言書を言います。
遺言の紛失や改ざんの心配がなく、
法的な効力を争われる可能性が低くなります。
家庭裁判所での検認も必要ありません。
そして、③秘密証書遺言とは、
故人が自筆で書いた遺言書を封書に入れ、封書を公証役場に提出し、
公証人に提出日等を封書に記載してもらった遺言を言います。
遺言の秘密性は確保できますが、家庭裁判所での検認が必要になります。
これらの遺言のうち、③はあまり実例がなく、①は実例としてはあるものの、
上記のとおり法的に争われるケースが多いため、お勧めできません。
やはり、②公正証書遺言が公証人の前で遺言の内容を伝えていることを前提としていることから、法的にその効力を争うことが難しく、最もお勧めできる遺言となります。
相続財産の額に応じて公正証書遺言作成費用が必要となりますが、
争いになった場合の弁護士費用等を考えれば、十分に元をとれる金額です。
心当たりのある方は是非、遺言作成又は作成のお願いを考えてみてください。
紫牟田法律事務所
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