先日顧問先にて行われましたコンプライアンス研修の講師を担当させていただきました。
コンプライアンス(compliance)は、comply(従う、守る)の名詞形で、一般用語として皆さんご存知のように法令順守といわれています。
コンプライアンスと聞くと、企業が法令を順守することだと思われる方が多いかもしれません。
確かにその通りであり、企業はコンプライアンスのために様々な内部ルールを設けて、企業活動における法令順守を確保する努力をしています。
しかし、コンプライアンスは単に企業を守るということだけには留まりません。
例えば、X株式会社のAさんがX株式会社が運営しているポイントカード事業の顧客記入済申込書の束を鞄に入れて食事へ行き、鞄をお店に忘れてしまい、申込書の束を紛失したとします。
かかるAさんの行為は当然X株式会社において許される行為ではありません。
仮にX株式会社が申込みをされた方から個人情報紛失について損害賠償を請求された場合には、損害額がいくらになるかは別の問題ですが、かかる損害を賠償しなければなりません。
ここでX株式会社が損害賠償責任を負うということに加え、もう一つ重要な問題は、損害を賠償したX株式会社がAさんに対し賠償した金額を会社に支払うよう請求できるかということです。
実際にX株式会社がAさんに請求するか否かは別の問題として、法的にはX株式会社は被害者に支払った損害をAさんに求償することができます(民法第715条第3項ご参照)。
従って、AさんはX株式会社が支払った金額を会社に支払わなければならないかもしれません。
この事例からお分かりただけるように、コンプライアンスは会社が法令を順守して、会社が損害を被ることから会社を守るというだけではなく、社員の皆さん自身が不要な損害を被ることを防ぐという意味もあるのです。
改めてコンプライアンスは会社を守ることとともに自分を守ることでもあるということをご認識いただき、日々の業務に従事していただきたいと思います。
その他、コンプライアンスについてなど、
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福岡市博多区の紫牟田法律事務所